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U-20女子W杯メディカルスタッフ・岡田瞳さんの取材を終えて[ @ichiroozawa]  

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第110号(2012年09月20日配信号)より抜粋※

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 来週25日(火)発売の『週刊サッカーダイジェスト』向けに、フィジオセラピスト(理学療法士)の岡田瞳さんのインタビューをとってきた。彼女は先日まで日本で開催されていたU-20女子ワールドカップのメディカルスタッフとしてレフェリーチームのサポート業務を遂行している。
 
 レフェリーチームのサポート組織はテクニカル、フィジカル、メディカル、メンタルと4部門に分かれており、岡田さんはメディカル部門を担当。業務内容としてはトレーニング担当以外にも、ケガの応急手当やフィジカルトレーニングのチェック、治療、マッサージ、コンディショニング相談、メディカルミーティング、試合帯同と多岐に渡る。
 
 その岡田さんには、7年半のドイツ在住歴がある。筑波大学でスポーツ医学の基礎を学び、その後ドイツに渡りフィジオセラピスト(理学療法士)の国家資格を取得。2009年よりスポーツリハクリニックに勤務し、主にベルリンのトップアスリート(ナショナル/ブンデスリーガ)に対応。治療、リハビリ、トレーニング指導に携わってきた。
 
 インタビュー取材で最も印象的だったのが、大会中にいいパフォーマンスを披露した欧州のレフェリーの多くがママさんレフェリーであること。岡田さんはその理由について、「育児補助などの制度が整っているため、母親とレフェリーを兼業できる環境が整っています」と説明する。
 
 残念ながら、日本の女子レフェリーが欧州の人たちのように、母親になってからもレフェリーとしての仕事をこなせるかというと「ほぼ不可能」というのが現状だろう。岡田さんは、「サッカー選手の競技人生と同じように、レフェリーでも個人あるいは周りのサポートによって競技人生に影響が出てくると思います」と日本と欧州のサポート環境の違いについて指摘していた。
 
 また、レフェリーのステイタスが確立されている話も面白かった。例えば、ドイツのトップレフェリーというのは有名プロサッカー選手同様に顔写真ポストカードを持参しており、ファンに配布するのだという。つまり、認知のみならず人気があるということ。
 
 メディカルの分野における日本と欧州(ドイツ)の違いについての話も興味深かった。日本ではスポーツ選手に特化したリハビリを受けられる環境がまだまだ整っておらず、一般の人と同じように痛みを取り除いてその場しのぎとなることが多い。

2012年09月20日配信のメルマガより抜粋。メルマガ本文では、この数倍近いボリュームで濃密なコンテンツを取り揃えています。ぜひご購読ください。※

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[ @ichiroozawa]「J1トップレベルの選手に」(牟田雄祐)天皇杯2回戦・アビスパ福岡 4-2 福岡大学 試合後選手コメント  

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第109号(2012年09月13日配信号)より抜粋※

■DF牟田雄祐(福岡大学4年)


 1年時から福岡大のレギュラーとして活躍した牟田も、最終学年の4年。複数のJ1クラブからオファーを受ける中、本人は単にプロ入りではなく「J1で即活躍」することを目標に日々努力している。ちょうど教育実習期間中ということもあり、コンディション的に厳しい面はあったと思うが、そうした中でも随所に牟田らしい堅実かつ迫力あるプレーを見ることができた。 
 J1の舞台で順調に伸びていけば、2014年のワールドカップ・ブラジル大会のメンバーにも食い込む可能性を秘める逸材だけに、この先も継続的に追っていきたいタレントだ。 
 
――2-4の敗戦でしたが、試合を振り返ってもらえますか? 
 
牟田雄祐(以下、牟田) 手応えもあったんですけど、やっぱりプロとアマの差が……。やられるところでやられ、取るところで取れなくて。本当に甘さが出たかなと思います。 
 
――DF陣としては、あのようなサイドからの失点の形は警戒していたと思いますが? 
 
牟田 ちょっとのことなんですけど、そこを突き詰めてやらないと、上ではやっていけないです。4失点もしているので、今日の試合は自分の責任です。 
 
――とはいえ、(福岡大の)乾監督も言っていましたが大学4年間で5回、この天皇杯でJクラブと対戦できたことはいい経験になったのでは? 
 
牟田 そうですね。1年の時にガンバ大阪とやって、頭の中が真っ白だったんですけど(苦笑)。今はしっかりと自分の中でやれること、やれないことの整理がついていますし、やりたいプレーもあります。こういう舞台でも落ち着いてプレーできているというのは財産じゃないですけど、いいことだと思います。 
 
――去年までの戦い方とは異なり、ドン引きのカウンター狙いではなく、自分たちで攻守にアクションを起こしながらのサッカーを貫いた点は評価できるのでは? 
 
牟田 まだまだ自分も含めて、マイボールの質が低いので、そこはもっとみんなが落ち着いてやれればいいと思います。練習からしっかりとやっていることは出せたのですが、まだまだ足りないと思います。 
 
――アビスパ福岡とは、練習試合でのマッチアップもあるとのことですが、公式戦になるとやはり違いましたか? 
 
牟田 勝負強いですし、それでお金もらってご飯を食べているので。自分たちとの差が小さいところなのですが出ていて、それが点差としても出たと思います。 
 
――今年の福岡大は『大型化』されたチームで、清武功暉のスローインも含めて、果敢にセットプレーからの得点を狙っていきましたが、逆に相手にセットプレーからダメ押しとなる3点目を決められてしまいました。 
 
牟田 課題ですね……(苦笑)。 
 
――主将として、今シーズン後半戦に向けての意気込みは? 
 
牟田 今日出た甘さを塗りつぶさないと、上では勝てないと思います。自分たちはまだ(九州)リーグ2位で、全国大会でも結果が出ていないので。待っていても何も得るものはないので、自分たちから積極的に取り組んでいきたいです。毎日毎日そういうモチベーションを保つのは大変ですけど、自分はキャプテンとしてしっかりとチームを引き締め、そのためにも自分が一番厳しさを持ってやっていかなければいけません。 
 
――前半の福岡大は球際の勝負でも優勢でした。結果は出ませんでしたが、4年間福岡大で高い強度の練習やプレーを積み重ねてきた成果が出た試合だったと思いますが? 
 
牟田 今はどういう状況でも動じないですし、慌てることもないです。でも、相手はJのプロですし、こちらは大学生で伸び伸びとやれる状況でした。思い切りやれたので、ミスを恐れずプレーできましたけど、自分が上の立場になればどうなるかわからないです。九州リーグだと逆の立場になってやりにくさもあるので。でも、何を言われようとやるしかないので、そこは動じないですね。 
 
――プロ入り確実の中で、個人として残りのシーズンで伸ばしていきたいところは? 
 
牟田 全てのレベルを上げないと上では通用しないと思いますし、プロに行くだけが目標ではないので。プロで出るために、身体の強さであったり、スピードだったり、ヘディング1つであっても味方につなぐとか、そういう細部にこだわってやらないといけません。そこで満足してしまったら終わりだと思うので。個人としては大学レベルのトップではいけないと思いますし、J1トップレベルで出場できるくらいの選手になりたいと思います。 
 
――つまり、プロ入りするためではなく、J1で活躍するために準備をしていくということですね? 
  
牟田 すでにJ1で試合に出ることを目標にできているので、そこはブレずにやっていきたいです。もちろん、九州の大学リーグで自分に何ができるのかというのもありますが、自分に厳しくやっていけばどんな状況でも成長できると思うので。プロに行けば1日1日が勝負なので、その勝負に負けないようにしっかりやっていきたいと思います。 
 
――ちょうど今は教育実習中だそうですが、大学生として、ピッチ外でも人間的成長のできる機会を得ていると思います。実習経験はどうですか? 
 
牟田 挨拶にしろ、服装にしろ、みんなの前でしゃべることにしろ、まだまだ足りないというか甘いです。 
 
――母校(筑陽学園高校)に行っているのですか? 
 
牟田 そうですね。高校3年間そこで頑張ってきて、自分が学んできたことを後輩に伝えるのも大事ですけど、2度とないかもしれない3週間なので、自分から積極的に行けば得るものはあると思います。高校の監督やコーチもたくさんのことを教えてくれるので、厳しいですけどしっかりと自分で学び、成長したいなと思います。 
 
――ロンドン五輪で先輩の永井謙佑が大活躍しましたが、いい刺激になりましたか? 
  
牟田 正直、五輪は悔しかったですね。悔しかったですけど、あそこの舞台に自分が立っていることを考えると、本当にできたかなというのはあります。吉田麻也さんを見ていても、安定感がすごいですし。目標はあのような舞台に立つことですけど、自分がその舞台に立つためにはもっともっと成長しないといけないですし、足りないことしかないので。もう悔しい思いはしたくないので、上に向かってやるしかないです。 
 

2012年09月13日配信のメルマガより抜粋。メルマガ本文では、この数倍近いボリュームで濃密なコンテンツを取り揃えています。ぜひご購読ください。※

[ @ichiroozawa]「大丈夫ですか?」と言いたくなる仕上がり U-19日本代表コラム  

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第109号(2012年09月13日配信号)より抜粋※

 3日から佐賀県鳥栖市でスタートしたU-19日本代表候補のトレーニングキャンプの取材のため、4日より九州に入った。11月上旬にUAEのドバイで開幕するAFC U-19選手権を戦う同代表だが、周知の通り過去2大会はU-20ワールドカップの出場権(アジアは4枠)のかかる準々決勝で韓国に敗れ、U-20W杯出場を逃しているだけに周囲からのプレッシャーがいつも以上にかかる世代。


 直前で橋本拳人(FC東京)がチーム事情により、久保裕也(京都サンガF.C.)が体調不良により不参加となったものの、最終メンバー発表前としては最後のトレーニングキャンプとなる今回のメンバーには26名が選出された。吉田靖監督が佐賀キャンプのために選んだメンバーの一覧は以下の通り。



■U-19日本代表候補トレーニングキャンプ(9月2~5日@佐賀)メンバー


【GK】 
櫛引政敏(クシビキ・マサトシ/清水エスパルス) 
池村彰太(イケムラ・ショウタ/神奈川大学) 
杉本大地(スギモト・ダイチ/京都サンガF.C.) 
ポープ・ウィリアム(東京ヴェルディユース)


【DF】 
遠藤航(エンドウ・ワタル/湘南ベルマーレ) 
松原健(マツバラ・ケン/大分トリニータ) 
三鬼海(ミキ・カイ/FC町田ゼルビア) 
佐藤和樹(サトウ・カズキ/名古屋グランパス) 
奈良竜樹(ナラ・タツキ/コンサドーレ札幌) 
川口尚紀(カワグチ・ナオキ/アルビレックス新潟ユース) 
岩波拓也(イワナミ・タクヤ/ヴィッセル神戸) 
秋野央樹(アキノ・ヒロキ/柏レイソルU-18) 
植田直通(ウエダ・ナオミチ/熊本県立大津高校)


【MF】 
大島遼太(オオシマ・リョウタ/川崎フロンターレ) 
田鍋陵太(タナベ・リョウタ/名古屋グランパス) 
風間宏矢(カザマ・コウヤ/川崎フロンターレ) 
杉本竜士(スギモト・リュウジ/東京ヴェルディ) 
熊谷アンドリュー(クマガイ・アンドリュー/横浜F・マリノス) 
廣田隆治(ヒロタ・リュウジ/FC岐阜) 
為田大貴(タメダ・ダイキ/大分トリニータ) 
矢島慎也(ヤジマ・シンヤ/浦和レッズ) 
野津田岳人(ノツダ・ガクト/サンフレッチェ広島ユース) 
松本昌也(マツモト・マサヤ/JFAアカデミー福島)


【FW】 
小野瀬康介(オノセ・コウスケ/横浜FC) 
南秀仁(ミナミ・シュウト/東京ヴェルディ) 
渡大生(ワタリ・ダイキ/ギラヴァンツ北九州)

 

■高体連1名、大学1名が示すJ所属組占拠のメンバー構成



 メンバーの所属を眺めてもらえればおわかりの通り、ほとんどがJクラブ所属の選手。93年1月生まれ以降の世代であるため、学年で言えば大学1年、高校3年が中心の代表になるが高体連所属は植田、大学所属は池村の各1名のみ。


 一方で、J2が中心ではあるがすでにJでコンスタントに活躍する遠藤、三鬼、奈良、廣田、渡のような選手も現れており、彼らはみな今季1000分以上の出場時間となっている。J1では風間八宏監督が来て以降、川崎で大島と風間が起用され始めている。


 Jユースにタレントが集まるようになった以上、U-19日本代表にJクラブ所属の選手が占める割合が8割、9割となることは見えていたことだが、その分新たな問題も浮上し始めている。それが選手の試合出場機会の問題で、Jのトップチームに所属する選手たちはこれまた大半が今季の試合出場時間が200分以下だ。


例えば、東京ヴェルディユース時代にクラブユース選手権をはじめ数多くのタイトルを獲得し、鳴り物入りでトップ昇格を果たした杉本竜士(2試合/3分)、南秀仁(4試合/91分)は今季トップでほとんど試合に出場していない。


 そう考えると、U-19日本代表にはこれまで五輪代表に付きまとっていた若手選手の出場機会の少なさ、試合勘のなさがスライドして降りてきたことがわかる。Jクラブに優秀なタレントが集まるようになったとはいえ、彼らが18歳、19歳でトップチームの中でレギュラー争いをするため試合出場の機会を得られず大事な18歳以降の育成で順調な伸びを示せていないケースが目立ち始めているということ。


 4日午後のトレーニング後、囲み取材で吉田靖監督にこの問題について、「これまで五輪代表世代(U-23)の選手にJリーグで試合出場できない選手が多く、U-19日本代表にはそれほどプロ選手がいませんでした。しかし、今は若手の試合出場機会の問題が下の代表にスライドしてきて、このU-19日本代表の選手の中にプロにはいるものの試合出場の機会が少ない選手が多数います。監督として難しさは感じますか?」という質問をした。


 それに対する吉田監督の回答は、「(ロンドンの)五輪世代がJ1で試合に出られなかった時代は、最初の頃だけだと思います。後はもうほとんど試合に出ていました。U-19年代では、チームで試合に出場していてもレギュラー選手は本当に少ないです。ただ、途中交代での出場や、何試合か出場している選手がいます。 
 そういう選手がどんどんどんどんチームの中で揉まれて伸びてきているので、そういう面ではJリーグで試合に出ている選手を上手くピックアップしてチームを作っていくということが大切なことだと思います」というもの。現状認識としては正しいと思うが、「チームの中で揉まれて伸びてきている」点については疑問符を付けたい。



2012年09月13日配信のメルマガより抜粋。メルマガ本文では、この数倍近いボリュームで濃密なコンテンツを取り揃えています。ぜひご購読ください。※

【全文掲載】「長野生まれではなく『松本生まれ』です」宇都宮徹壱氏×元川悦子氏トークイベント参加リポート 

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第107号(2012年08月30日配信号)より全文掲載※

(株)アレナトーレ



 24日、新宿西口のブックファースト新宿にて購入者限定で行なわれた宇都宮徹壱さんと元川悦子さんの書籍発売記念のトーク&サイン会に参加してきた。ご存知の方も多いとは思うが、宇都宮さんは7月19日に『松本山雅劇場 松田直樹がいたシーズン』を、元川さんは7月23日に『僕らがサッカーボーイズだった頃~プロサッカー選手のジュニア時代~』を上梓された。
 
 サッカーメディア界の先輩ジャーナリスト(ライター)として現場では大変お世話になっているお二人で、あえてはっきりと言うが「この業界では数少ない尊敬できる先輩同業者」だけに、その緻密な取材と努力の結晶である新刊が少しでも売れるよう微力ながら協力したいと思い、今回は珍しくイベントのリポート記事を書くことにする。
 
 テーマの全く異なる本とはいえ、「長野県」ではなく、「松本」生まれの元川さんが大の松本山雅贔屓というのはすでに知っていたので、このイベント開催を知った時から「間違いなく面白いものになる」という予感はあったが、実際はその予感を上回る最高のイベントだった。2作品共に株式会社カンゼンからの出版ということで、同社サッカー編集部の森哲也氏(『サッカー批評』『フットボールサミット』編集長)が司会進行。
 
 前半に取り上げられたのが元川さんの『僕らがサッカーボーイズだった頃』。香川、吉田、清武、岡崎、大津、酒井宏樹、金崎、権田、松井大輔、石川、北嶋、川口、山田直輝という13名のプロ選手たちの生い立ちについて、元川さんが彼らに関わった指導者や親に総力取材している内容だ。
 
 正直、ここまで選手の関係者に話を聞けるライターは元川さんをおいて他にはいないだろう。冒頭、元川さんより「すごく取材できた選手もいれば、そうでない選手もいる」と説明があったが、どの選手のストーリーも新聞記者出身の元川さんらしい丹念な周辺取材に基づいた構成となっていて、惹き込まれる。
 
 話の中で元川さんからさらっと「育成をよくしたいという気持ちがあります」という言葉が出たのだが、日頃からこういう矜持を持って取材活動をしているからこそ、これだけの関係者に深く取材できたのだと感じる。私から断っておくが、元川さん自身も取材対象者との距離感を気にするタイプの書き手であり、選手と「仲良し」関係になることを嫌う。
 
 残念ながら、日本にはそのタイプの書き手がまだまだ多く存在し、サッカーメディアの編集者も適切な距離感を持って時に厳しく叱咤激励できるジャーナリスティックな視点や姿勢を持つ書き手を冷静かつ適切に判断できないため、選手やその関係者にすり寄って近すぎるポジションを取るような書き手に原稿依頼が殺到するような風潮が残っていると感じる。
 
 元川さんもそれで幾度となく苦虫を噛み潰してきたのだと思うが、本当に期待すべきいい選手に対しては取材する側も「選手育成に関わっている」という責任感を持つべきだと私は感じているし、元川さんは今以上に閉ざされてきたこの業界で長年その責任感とプライドを共存させつつ活躍されてきた書き手だからこそ、こうした内容の本からも全く「私はこの選手と仲良しです」といった子供じみた自慢が漂ってこない。


(株)アレナトーレ



 後半は宇都宮さんの『松本山雅劇場』についての話。7月19日に書店に並び、特に松本方面での売れ行きは「すごかった」のだという。実際、ツイッター上では「山雅本はここで買う」というハッシュタグが出回り、発売当日に増刷になったスタートダッシュぶり。
 
 著者として企画からしっかりと練り込ませる作業を怠らない宇都宮さんらしく、「単なるシーズンの記録ではなく、プラスアルファがほしかった。それが人であり、人のインタビューでした」と説明した。
 
 松田直樹のいたJFL2011年シーズンは、同時に「松田直樹がいなくなったシーズン」でもあった。宇都宮さん自身、「松田直樹の死が重くて、これをどういうように表現するかというのは悩んだし、(編集者と)議論してきました」と明かしている。ただ、「不在であるがゆえに、彼のいたシーズン」でもあったという2011年の松本山雅を宇都宮さんらしい独特のタッチと感性で描いている。
 
 宇都宮さんの企画意図説明の後すぐに松本出身で山雅を長年追いかけている元川さんも参戦し、イベントは最高潮の盛り上がりを見せる。特に元川さんが出身者として説明してくれた強烈なまでの地域性、アイデンティティーの話が興味深かった。「松本出身の人間として『長野県出身』と言われることも嫌」と言い放つ元川さんの言葉通り、松本には「長野」に対する強烈なライバル心が存在し、松本の人間にとって松本山雅というクラブ、アルウィンというスタジアムは、「ここが松本だ」と大声で叫ぶことのできる場所。「小さいかもしれないけれど、スペインのレアルとバルサのような関係がある」と元川さんは説明した。
 
 長野パルセイロとの『クラシコ』、そしてサッカー専用スタジアムのアルウィンをすでに持ち合わせる松本山雅だからこそ、宇都宮さんは「モチベーションのグラデーションがぼやっとしているJ2にあって、J2の魅力をどう出していくのかは松本山雅が1つの指標になっていく」と断言する。
 
 個人的にも、「Jに行くことはあくまで手段であり、アルウィンに2万人のサポーターを集めることが目的」(宇都宮さん説明)という松本山雅の存在には注目している。勝とうが負けようが、J2にいようがJFLにいようが、地元のサポーターたちに愛され、どんな時でも彼らが集まれる場を作ることがサッカークラブの本来の目的であり、J1やJ2というカテゴリーは手段であって目的ではないのだから。
 
 最後に元川さんは、「スタジアムに行ったら楽しいと思えることが大事。松本はまだ新鮮だけれど、何か付加価値がないとこの先は厳しい。J1でも鹿島のお客さんが減っているし、それはJリーグ界全体の問題」と語り、宇都宮さんも「おそらく、松本の10年後が今の新潟。10年経っても常に新鮮さが演出できるかが大事」と述べた。
 
 お二人共に、松本山雅というクラブを定点観測することにより、JリーグやJ2の生き残り策を見出そうという姿勢が出ており、『松本山雅劇場』という本はある意味で山雅というクラブのプロローグに過ぎないのかもしれないという印象を持った。
 
 山雅マフラーを持参した元川さんが後半戦にも継続出場したことで、試合を振り返ってみれば圧倒的に元川さんのトーク支配率が高いイベントではあったが(苦笑)、宇都宮さんの影が薄まることもなく、絶妙のバランスを保ちながら質疑応答とサイン会を経てイベントは終了。おそらく、参加者全員が心地良い満足感と2つの作品への期待感を持って帰宅したに違いない。
 
 個人的な感想でもう一つ加えるならば、こうした作り手の意図や想いが伝わるようなイベントは躊躇することなく積極的にやっていくべきなのだということも感じた。まだまだ「世に出して終わり」となっている作品や「いいものを作れば売れる」と思う風潮が多い中で、作り手が取材や執筆のスタンス同様に丁寧に読み手やファンに降りて説明を加える作業というのはこれからの時代に必要不可欠なのかもしれない。
 
 そこに集まる人の人数の多い、少ないに関係なく、自らの作品に興味を持ってくれた、本を手にとってくれた読者に向かう作業の大切さを尊敬する先輩お二方から学ばせてもらった。イベントに参加できなかった人も多かったと思うからこそ、本当にお二人らしいスタンスや想い、サッカーへの愛情と優しさがたくさん詰まったこの新刊2冊を多くの人に読んでもらいたい。
 
 
 宇都宮徹壱著 『松本山雅劇場 松田直樹がいたシーズン
 
 元川悦子著 『僕らがサッカーボーイズだった頃~プロサッカー選手のジュニア時代~


小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第107号(2012年08月30日配信号)より全文掲載※

「夏だから伸びる」ということはない 山梨学院大附属高校 吉永一明監督 インタビュー【 @ichiroozawa】  

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(C)Ichiro Ozawa



小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第108号(2012年09月07日配信号)より抜粋※

 2日に桐蔭学園高校グラウンドで行なわれたプリンスリーグ関東1部の桐蔭学園高校と山梨学院大附属高校(以下、山梨学院大附)の試合は、1-4で山梨学院大附が快勝した。10チーム2回戦総当りのプリンス1部も11節が終わり、山梨学院大附は7位、桐蔭学園は最下位という順位となっている。 
 
 試合は開始24秒で桐蔭が先制するも、終始山梨学院大附が高いボール支配率をゲーム支配につなげる展開。前半30分に同点に追いつくと、後半は3点を叩きこみ突き放した。興味深かったのは両チームのボランチのボールの受け方の違い。桐蔭学園のダブルボランチが相手を背負いながら、ボールに近づきながらより苦しい局面を自作自演して受けにいくのに対して、山梨学院大附のダブルボランチはボールに近づくよりも半身で受けることのできるアングルを作ってボールを受けていた。 
 
 結果的にそこでの受け方の差が、ポゼッション率、サッカーの質、最終的にはスコアの差に反映されていた。大変失礼な言い方にはなるが、強豪校として優秀な選手を数多く集め、昨年のインターハイでは全国制覇を成し遂げている桐蔭学園のようなチームでも、「あんなボールの受け方をしかできず、そこを教えられていないのか?」という驚きを持って見ていた。この試合を見る限りではあるが、それは「個人能力が低い」という問題ではなく、「しっかりと基礎、(個人)戦術を教えられていない」だけではないかと感じた。 
 
 何だか、桐蔭学園批判のようなリード文となってしまったが(苦笑)、試合後は久しぶりにお会いした山梨学院大附の吉永一明監督に話を聞いたので理路整然とした“吉永節”に耳を傾けてもらいたい。 
 
 
――開始24秒で失点を喰らいましたが、その後は落ち着いてゲームをコントロールできたように見えました。 
 
吉永一明監督(以下、吉永監督) CBのミスという、一番危惧していたところの失点でした。試合前にはああいうことを起こさないようにと選手たちに話していたのですが、注意していても起こりうるものですし、その後は割り切ってプレーできていました。b> 
攻撃でも守備でも、相手のミスではなく自分たちの意図通りにやることを目標に練習を積んでいますし、そうやってボールを奪う機会は増えています。相手がそれを嫌がって大きく蹴り出したときのケアが次の課題で、そういう意味で最初の失点は残念です。しかし、その後はアクシデントもなく進められたと思います。 
 
――チームとしてボールの奪いどころ、奪い方がはっきりしていました。 
 
吉永監督 夏はいろんなことを練習してきましたが、グループでボールを奪うということに関しては夏前よりも明確に打ち出してきました。うちには個人で奪える選手もいませんし、グループで奪うために必要なことをトレーニングで積み重ねています。今日の試合でもよくトライしてくれました。後半に疲れて間延びしてしまったところは課題ですが、トライという意味では後半戦の良いスタートが切れたと思います。 
 
――ボランチの飛び出し方や2列目より前のプレスバックの圧力が非常に良く、2列目でかなり相手をハメてボールを奪えていました。それが今年のチームの特長ですか? 
 
吉永監督 そこは生命線だと思います。持ち味になりつつある、といったところでしょうか。傑出した選手がいないので、グループで攻守を組み立てなければなりません。そのためにもより高い位置でボールを奪うのが理想なので、2列目のプレスは重視しています。 
 
――ボールを奪ってからの攻撃も魅力です。 
 
吉永監督 奪うまでは良かったと思いますが、奪った後相手を見ずにスピードを上げてしまい、結果的に自分たちで難しい状況を選んでしまったというところがありました。選手たちには「速くする場所を間違えてしまった」と話しました。そのあたりの判断力が上がれば、もっと崩して点を取れたと思います。ただ、フィニッシュのところは練習し続けるしかありません。そもそもサッカー自体が簡単に点を取れるスポーツではないので、外したとしても割り切っていかないと、その後の結果に影響が出てしまうと思います。 
 
――ゴールキックでも相手に「大きく蹴る」と思わせた上で、キックの瞬間にサイドバックが下がってきてボールを引き出すなど、ボールの持ち方、ポゼッションに工夫がありました。 
 
吉永監督 できるだけボールを保持していたい気持ちはあります。大きい選手がいないので、蹴っても競り勝てないことが関係していますが、ただ持っているだけでは意味がありません。それは選手たちもわかっているので、意図的に動かすことに挑戦しています。いかに質の高いくさびを入れるかは彼らも考えてくれています。 
 
――桐蔭学園との差は、ボールを受けたときのアングルの作り方にあるように思います。山梨学院大附の選手はアングルを作りながら、前を向ける時には向くという習慣があり、それが勝敗を分けました。 
 
吉永監督 受けたボールを単純にリターンというのは、基本的になしにしていて、3人目の動きはキーワードとして持っています。それを作るためには、ボールを受けた選手も工夫しないと見つけられません。今日の試合では意識できていたと思います。 

2012年09月07日配信のメルマガより抜粋。メルマガ本文では、この数倍近いボリュームで濃密なコンテンツを取り揃えています。ぜひご購読ください。※

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