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「高校3年生で何が引退だ、と思いますね」 宮内聡氏(成立学園高校サッカー部総監督)インタビュー(下)[ @ichiroozawa] 

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第127号(2013年01月25日配信号)より抜粋※

――これまでの指導の中で、選手のメンタルを変えることができた好例はありますか?


宮内 去年ファジアーノ岡山に入った飯田涼という選手がいます。中学は横浜F・マリノスのジュニアユースでプレーしていました。うちは毎年夏頃までに、主要Jクラブのジュニアユースと1年生との練習試合をします。飯田のいたマリノスのU-15もうちに来てもらって1年生と試合をやって、成立学園の環境、雰囲気を味わってもらいました。一方で、われわれもマリノスの選手を見させてもらい、いい選手がいないかとチェックするわけです。


 そういう試合では終了後に、「この子は、ユースに上がるのですか?」と聞きます。興味を持った選手がユースに昇格するかどうか、ダメ元で聞くわけです。中には、高校サッカーを望む子もいるかもしれませんから。マリノスU-15の時は、「いや、みんなユースに上がります」と言われ、向こうから逆に「今からでる2本目、3本目の選手たちを見てもらえますか?」と言われました。その中に飯田ともう1人気になる選手がいて、2本目、3本目の試合後に「ぜひ、ほしい」と言ったんです。


 するとコーチの方から、「宮内さん、この2人に目をつけてくれて本当にありがとうございます」と言われました。「本来はこういう2人を何としてでもユースに上げたかった」と。どうしてもその時点で『早い』『でかい』『うまい』選手を選んでしまう傾向があって、他の高校から声がかかるのもそういう選手たちだと。
 
 だから、この2人はフリーだと言うので、「是非、成立に」ということで入ってくれました。それで3年間一生懸命やってくれました。飯田はお母さんがフィリピン人、お父さんが日本人のハーフで、独特のリズムがあるんです。身長は165センチ程度で小柄なのですが、どうにかこういう彼を上につなげたいと思って、いろいろなことを話しながら指導しました。
 
 彼自身も「僕の武器は何ですか?」と積極的に聞いてきて、サッカーのことに関してものすごく真摯に、一生懸命に考える姿勢を持っていました。


 サッカーに関しては本当に真面目で、言ってみれば大津みたいなタイプでした。「こいつは大学に行くよりも、どこかが認めてくれたら上につなげたいな」と考えていました。そうすると、高校2年生の頃にジュビロ磐田のスカウトが来て、「宮内さん、あの子何年生ですか?」と聞いてきました。「2年生です」と答えると「あの子面白い」と。ジュビロとして彼を追いかけるということだったので、「どうぞ見てやってくれ」となりました。
 
 そういう話もあったし、大学からも「あの子面白いね」と。まあ、誰が見ても面白かったですから。それで3年生になって、ジュビロのスカウトが「ぜひ練習参加してくれ」と言うことで、練習に連れて行きました。ジュビロ以外にも、甲府、横浜FC、岡山といくつかのJクラブに連れて行ったんですよ。
 
 そうしたら彼は、ずっと練習していたかのように、「もっとボールを出してください」と最初から要求するような姿勢を見せてプレーしていた。今までいろいろな選手を連れて行きましたが、彼みたいな選手は初めてです。小さいくせに、偉そうに「ボール出せ」とやっているわけですよ。ある意味、「大したものだな」と思いました。


 ただ、好きなことしかやらないというわけではないんですけど、もう少し大人になってもらいたいなという部分がいろいろな生活の中にもありました。Jの練習にシーズン中に連れて行ったことで、ますます自信を持って、チームに帰って来た時に、自分でやりすぎるというか、もっと周りをうまく使いながら自分の良いところを出してほしいなというようなところが出てきた。
 
 キャプテンをやっていたのですが、周りから「あいつは自分だけでやる」みたいに思われ始めたし、実際に一人でもできてしまうからそういう目で見られたり、言われたりと危ない時期もありました。サッカーはチームスポーツですから、周りにいろいろな目があって、「あいつとサッカーをやりたい」とならなきゃいけないわけです。最終的にはそういうふうになっていって、岡山入りが決まったんですけど。


 それで、選手権予選は準決勝で負けてしまって、プリンスリーグの試合が2試合残るような状況でした。3年生にとってはとても辛い、選手権で勝っての2試合だったらいい強化試合になったわけですけど、言ってみれば目標を失っている中での試合でした。けれど、その2試合をみんなで頑張りながら、重い荷物を下ろしてのびのびサッカーができたわけです。
 
 そして、最後のゲームは大宮アルディージャのユース相手にいいゲームをやったのですが、2-3で負けてしまった。試合後、最後だからみんなで写真撮りましょうとやっていた時に、飯田涼だけが一人悔しがって大泣きしていたんです。


 その写真では彼だけ下を向いて、ワーワー泣いている。今までみんなに迷惑をかけたということと、このゲームに勝てなかったということで。キャプテンとして、最後にみんなでやってきたのに勝てなかったと。私が感じるには、そういうところで彼は変わったのではないかと思います。
 
 それで岡山に行って、27、28歳の先輩たちの中で18歳のプロ選手としてやっているわけです。最初から声を出して、仕切ってやっていたし、一緒に食事をしてもすごく立派になっていて、身体のケアのことなどの話をしてくる。成長してやれているなと。よって、私はあの最後の大宮とのゲームが無事に終わって良かったと言っている中で、一人泣いて悔しがっていた姿というのは、上につながるメンタルなのかなと感じました。



(c)赤石珠央



――指導者として、選手に次のハードル、目標を与えていく作業というのは大切なのでは?


宮内 そうですね。みんながみんな、サッカーで上につながっていくわけではないですが、その子なりの目標をはっきりと見えるようにしてあげればいけないと思っています。また、一応日本には「引退」という言葉がありますから(苦笑)。高校3年生で何が引退だ、と思いますけど。そういう呼び方になっているので、選手権で負けてから残りの何カ月かをガンガン練習して、大学に行く準備をしなければいけないのではと思っています。


 高校サッカーでいうと、全国まで行けば1月に終わりますけど、それでも3月までの2カ月くらいを自動車の免許を取ったり、次のステップへの準備期間に充てるわけです。もちろん休むことは大事なんだけれども、ここの期間こそしっかりトレーニングしておかないといけないと思います。そういうところは、しっかり伝えたいと考えています。


――選手との付き合い方というのは、選手のパーソナリティに合わせて変えているのですか?


宮内 十人十色だから、変えていると思います。ただベースになるところ、「成立学園サッカー部のルールはこれだよ」というのはあります。そこは、最低限守らなければならない。ただA君、B君、C君はみな違うので、こういう伝え方をしてやった方がいいなというようなことは、Jリーガーの選手を相手にしても絶対にあることだとは思います。



小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第127号(2013年01月25日配信号)より抜粋※

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【一部公開】“人間的スケールアップ”を実現する福岡大のスペイン研修[ @ichiroozawa] 

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第127号(2013年01月25日配信号)より抜粋※


(c)Alberto Iranzo



 6日に行なわれた第61回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)では惜しくも準優勝に終わった福岡大が、新シーズンに向け1月12日から21日までの日程でスペイン研修を実施した。今回はバレンシアに住む尾崎剛士氏のコーディネイトとアテンドのお陰で、基本的には尾崎氏に任せ、途中の17日から研修の様子を視察した。無事に全日程を終了すると同時に、研修プログラム自体のレベルアップも実感できた。


 インカレ決勝の戦評について厳しい指摘をしたが、福岡大はこの4年の主要大会(総理大臣杯、インカレ)で3度のファイナリストとなり、関東、関西の強豪大学を凌ぐ「地方大学の雄」として、今や大学サッカー界で圧倒的存在感を誇る。

 今年もバレンシア市内に拠点を置くウラカン・バレンシアCF(スペイン3部)を研修先クラブとした福岡大だが、インカレで主力として活躍したMF平田拳一朗(3年/高川学園高)、MF弓崎恭平(2年/東海大五高)、FW山崎凌吾(2年/玉野光南高)、MF稲葉修土(1年/立正大淞南高)の4名がフベニール(ユース)Aとトップチームの練習に参加した。


 もう当メルマガでは何度も書いてきていることだが、「パスサッカー」の印象が強いスペインサッカーの真髄は球際の激しさ、高いプレー強度にある。これは「スペイン」という冠を取って「サッカーの真髄」そのものであり、本質であろう。

 しかし、低いプレー強度、緩いプレッシャー、実際の試合と異なる過度な数的優位オーガナイズの練習メニュー(特にポゼッション練習)によって、なかなか高いプレー強度でのプレー経験がない日本人選手の多くは、世界での戦い、海外でのプレーを経験する度に、厳しい球際、激しい当り、高いプレー強度に面食らってしまう。


 各ラインに大型選手をそろえ高さとパワーを武器に、ポゼッション化が進む日本サッカー界のスタンダードから外れた堅守速攻型のサッカーを実践する福岡大の強さの秘訣は、単に「フィジカルに優れている」のではなく、日頃の練習に実戦や世界を意識した高いプレー強度にある。


(c)Alberto Iranzo



 だが、その選手たちを持ってしても「どのチームも綺麗というか、つなぐサッカーにこだわると思っていたが、実際には勝ちにこだわるサッカーをしている」(平田拳一朗)というコメントが出て来てしまう。ただ、今回は乾眞寛監督がスケジュールの関係で選手と共に渡西できず、練習参加の様子を現地視察できなかった。そのことから、例年以上に事前の準備と働きかけに時間をかけ、今年の4戦士はスペインに入った瞬間からピッチ内外で積極的な姿勢を見せていたのだという。(私も最初の時期の様子は見ていないので、尾崎氏や選手と共に渡西した児玉コーチらの話による)


 4選手を指導したフベニールAのエメルソン・エステベ監督も、「各選手が初日から積極的な姿勢で持ち味を発揮してくれた」と高い評価を与えた。「J2以上のレベルがある」とも評されるスペイン3部で現在3位に位置するトップチームでの練習参加はスケジュールの関係で1回のみに留まったが、選手たちからは「意外にやれた」という手応えをつかむ発言も出ていた。

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第127号(2013年01月25日配信号)より抜粋※

【一部公開】「サッカーは教えてうまくなるものではない。」 李済華(國學院大學久我山高)×小澤一郎講演録(4)[ @ichiroozawa] 

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第126号(2013年01月17日配信号)より抜粋※


撮影:(株)アレナトーレ



<3から続き>


李 ボールを蹴るとか触るとかいう技術はもう少しうまくなります。大体サッカーの素質の90数パーセントが『ゴールデンエイジ』と言われる12歳までに完成する、と言われていますけれども、12歳からではイメージを作るのは少し難しい。


 結局サッカーはサッカーをすることでしかうまくならないので、特別な練習方法というのはありません。新しい発見というものは、基本的にはない。ですから、サッカー指導者で絶対的な権威を持つ人間はなかなか出ません。特別な発見や法則がありませんから、ノーベル賞のような特別な賞をもらう人は出ないと思います。
 
 化学などは特にそうだと思いますが、法則性を探すことですよね? そういう要素はサッカーにはありません。感性と感性のぶつかり合いになります。そういう意味では、サッカーは芸術に近いものだと思います。


 ただ突飛な話になるか分かりませんが、タレント性は持って生まれたものだということですが、メッシや香川のタレント性というのは彼らが持って生まれたものだとしても、彼らがもし野球選手だったらサッカーの才能は開花されていないでしょう。サッカーをやったからサッカー選手としての才能が開花したわけです。
 
 野球だったら今のサッカー選手としての香川やメッシはいなかったわけです。でも、誰かがサッカーを教えたのは確かで、ただ自然に今のメッシが生まれたのではない。誰かがサッカーを彼らに教えた、それは確かな事です。
 
 どのように教えたのか、どのぐらい教えたのかという部分はあります。ただ、基本的にサッカーは教えるものではなく「アドバイスするもの」だと思っています。サッカーは教えてうまくなるものではない。「自分でうまくなるスポーツ」で、指導者はそれに対して若干アドバイスを加えるレベルだと思っています。


 しかしチームプレーでは、彼らのプレーを引き出すためにある程度、システムや戦術を当てはめないといけない。その中で個人の能力も高まってくるという意味では「教えている」、「トレーニングさせている」と言えるとも思います。
 
 この矛盾するようだけれども微妙なバランス感覚の中で、選手はうまくなっていく。「サッカーの中で本人がうまくなるんだよ」という前提にありながら、なおかつその子たちにある程度のアドバイスや戦術的なトレーニングなどをしながら、微妙なバランスを行ったり来たりキャッチボールする中でうまくなってくるものだと思います。


 じゃあ、どのようにそれをやっていくのかというと、ゲーム形式の中でしかうまくなりません。ゲームの中で少しずつ修正していきながら子供たちにプレーさせていく。そこが、サッカーの難しい所ですよね。トレーニングだけではうまくならないし、教えてうまくなるものではない。
 
 実際にはある程度のトレーニングをさせているし、ある程度教えもいる。でも、「サッカー選手は自分でうまくなるんだ」と。この微妙なバランス感覚の中でやっていますし、久我山もそういうサッカーをやっていると思います。


 サッカーというのはそういうスポーツなんです。「局面の中で理解する」としか言いようがない。よく子供たちが私に「この時どうすればいいんですか?」と聞いてきますが、「わからないよ、俺は」って(笑)。
 
 その局面、11対11の局面がサッとわかって、時間帯がサッとわかったならば、「この時はこういうプレーが良かったよね」と言えるけど、その局面だけでは何が良かったかなんてわからない。全てにおいてそういうスポーツだから、連動性、今しかないという、そういうサッカーの特性を理解していないとうまくならないと感じでいます。


小澤 その辺を実際に選手に指導する時にはある程度噛み砕いて指導しなくてはいけないのだと思いますが、その辺はどのように工夫されていますか? そこはわかってもらおうとあまり考えず、李さんは「わかる者だけわかればいい」というスタンスですか?


李 久我山の監督という立場で言えば、久我山の子供たちを教えているので、これを言ったら親御さんたちに「指導放棄しているのか?」と言われちゃいそうですが、実際の所はそれに近い(苦笑)。


 それでも、時々アドバイスはしているんですよ。「この時はこう」くらいは言っています。でも、現実には30人~40人、全員がいる時に「こうだよ」と言ってもわかる子はわかっているし、わからない子はわからないんだろうなと。そういうところは正直あります。「わかる子はわかるし、わかってない子はわかってないんだろう。まあ、それでしょうがないじゃないの」と。


 丁寧な指導者なのか、というと、どちらなんでしょうね……。学校教育で言えば全然丁寧じゃないでしょう。私自身は、非常に丁寧な指導者だと思っていますが(笑)。


小澤 手取り足取り教えることが丁寧な指導だ、とは思ってないということですよね?


李 その通りです。全く、そのようには考えていません。


小澤 ということは、例えば自分が伝えたことが伝わらなくても周りにいるコーチとか、周囲のサポートも得ながら、ある程度スタッフ全体で伝えたり、理解させたりするような組織的な動かし方をしているという事ですか?


李 監督という立場で言えば、ウチの指導者たちは監督である私の立場を非常に理解しながらやってくれていると思います。もう一つ、これも逆説的ですけど、スポーツ選手はわからなくてもできれば良いんですよ。わかってできる者は。


 わかってもできない者が、スポーツ選手としては一番ダメ。頭でわかっても、身体を動かしてそれを表現できなければスポーツ選手としては良くない。わかっていて、できるのはまあまあ。スポーツ選手として一番優れているのは、わからなくてもできちゃう者です。私が言っていることなんてわからなくても点を取って来る、うまい選手はうまいですから。


 スポーツ選手ってそういう部分がありますよね。わかんなくたってできれば良い。シャビやイニエスタは、自分のプレーをある程度理解しながらやっていると思います。けれども、たまにいるじゃないですか。「君は、本当に自分のプレーを理解してやっている?」と感じるすごいプレーヤーが。
 
 そういうプレーヤーがスポーツにはいますよね。ですから、全体に話して「わかる選手がわかればいい」という感じはどこかにあると思います。



小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第126号(2013年01月17日配信号)より抜粋※

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【一部公開】大津祐樹をセンターフォワードに置いた理由 宮内聡氏(成立学園高校サッカー部総監督)インタビュー(上)[ @ichiroozawa] 

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第126号(2013年01月17日配信号)より抜粋※



(c)赤石珠央


 昨年のロンドン五輪での関塚ジャパンの躍進の中心選手の一人、大津祐樹(VVV/フェンロ)の母校としても知られる成立学園で2000年から総監督を務める宮内聡氏。帝京高校時代から高い技術と卓越した攻撃センスに注目が集まり、ユース代表入り。卒業後は、名門・古河電工入りするも、ひざの負傷で思うようなパフォーマンスを残せない壁にぶち当たる。しかし、守備的MFに転向後は、攻撃的センスを素早い読みに反映させる別の形で才能を開花させると、日本代表にまで上り詰めた。


 選手引退後に指導者の道に入った宮内氏が選択したのが、女子サッカーだ。L・リーグの強豪・プリマハムFCの監督を約10年間務めると、その手腕が高く評価される形で97年からは女子日本代表の監督も経験する。「大津の恩師」として紹介されることが多くなったとはいえ、往年のサッカーファンからすれば宮内聡というサッカー選手は現在の「ボランチ」、守備的MFというポジションの概念自体を形作った名プレーヤーだ。


 今回は大津の話からスタートして、宮内氏のサッカー観や指導哲学、それからサッカーというスポーツの捉え方まで多岐に渡るテーマを語ってもらっている。サッカーはもちろんのこと、指導者としてこれまでに関わった選手たちへの愛情がはっきりと伝わる宮内聡氏の話にじっくりと耳を傾けてもらいたい。


取材日:2012年11月30日

協力:トラットリア アズーリ(武蔵浦和駅徒歩1分)




――はじめに、大津祐樹選手との出会いについて教えてください。


宮内聡(以下、宮内) 毎年成立学園のサッカー部として、中学生を募集する時期が来るのですが、夏休みの末くらいに大きなセレクションをHPに掲載して希望選手を募ります。総数で言うと、毎年200名ほどの応募がありまして、インターハイに出られない場合は7月末に1回目をやります。


 そこの中から、最終的に約30名を選出するという形を採っています。ご存知のように、われわれは成立ゼブラという下部組織(クラブチーム)を持っていまして、そのU-15から10名から12名ほどが上のユースに上がってきて、6年計画ということで育成を強化しています。それ以外のところで、別の血を入れるというような考え方で外部から募集し、トータルで30名選出しています。


 大津がうちに来てくれたのはだいたい9月頃で、30名が決まった中で、鹿島アントラーズノルテの指導者から連絡がきて、もう1人いた大学へ進学した選手と2人で来ました。アントラーズとのつながりも当然ありますので、「練習参加はOKですよ」ということで、ちょうど試合形式の練習をやっていたもので、そこに混ぜました。

 そうしたら1、2回ボールを触った時点で、「この子はいい感覚、ボールタッチをしてるな」と。つながりもある中で、もしうちの雰囲気、環境、監督コーチの言っていることなどを気に入ってもらい、そこに通ずるものがあるなら、「内定を出します」と言いました。それが最初の出会いですね。


 その後、大津は残念ながらユース昇格リストから外れてしまいました。よって、高校サッカーで学びなさいということになり、アントラーズのコーチが成立学園をよくわかってくれていたので、彼が大津に「宮内さんのところへ行ってみろ」ということになり、うちに来てくれたという経緯だったと思います。


――第一印象は?


宮内 見た目がひょろひょろっとした華奢(きゃしゃ)な身体で、それがユースに上がれなかった要因なのかな、というのが第一印象でした。ただボールを扱う仕草を見て、「これでユースに上がれないのは厳しい。J下部というのは厳しい世界なんだな」と痛感しました。


 彼と面談した時に「ぜひともお世話になりたい」と言ってくれたので、「われわれはサッカーを通して君を鍛えるぞ。その覚悟ができるのであれば、うちに来てくれ」と言いました。


――その時、宮内さんの中に「大津は将来的にプロ、代表選手になれる」という感触はあったのですか?


宮内 全くなかったです。ただ、「この子はいい感覚しているな」とは思いました。身体が強くなったり、いろいろな場数を踏めば、非常に面白い選手になるというのは感じました。


――過去、大津選手のようなフィーリングを受けた選手はいましたか?


宮内 いるにはいますよ。


――では、プロや代表にまで上り詰める選手と、そうならない選手の違いというのは具体的にどこにあるのでしょう?


宮内 やはり、本人次第というか、いいものやいい感覚を持って入る選手はその時点では何人かいると思います。フィジカルが強い選手もいます。でも、われわれはボール感覚やイメージをたくさん持っている選手を強化、育成したいと思っています。もちろん、高校サッカーで結果を出すためには速く走れて強いほうがすぐに結果は出ると思いますが、正直そこに面白さは感じないですね。


「日本のサッカーはこうあるべき」と勝手に考えていますから(笑)。大津みたいな選手を育てる上では、3年間で強く、速く走れるようになるかどうかではなく、ボール感覚とイメージのところを指導していかければという思いが強いです。


――世間的には、「チャラ男」と呼ばれやや軟派なイメージもある大津選手ですが、高校時代からサッカーに対して真摯(しんし)に、真面目に取り組んできたということですね?


宮内 そうですね。彼の高校3年間を振り返ってみると、彼らの代は本当に良い素材が集まっていた世代でした。成立学園での指導を十数年やっていて、初めての年代だったと言っても過言ではありません。「これはひょっとすると日本一いけるんじゃないか?」とスタッフ全員で話していたくらいですから。


 ちょうどその年の選手権で日本一になったのは、大前(元気)選手のいた流経柏(流通経済大柏)だったと思います。県は違いますが近いのでよく試合をさせてもらっていたのですが、負けた記憶がありません。ほとんど勝つか、引き分けでした。互角の試合ができていたことは、彼らにとっても自信につながっていたと思います。


 最終的に、大津が3年生の時の選手権東京都予選は準決勝でPKで負けてしまったのですが、大津を含めて3名がJに入団し、他の選手もほとんどが関東1部の名門と呼ばれる大学に進学しました。タレントと呼ばれるようなメンバーがそろっていましたし、ライバル意識も高かった。個性も強かったので、われわれがチームとしてしっかりまとめることができれば、というような感じでした。

 

 大津たちの代は1年生の時に選手権に出ていて、大津ともう1人が1年ながらレギュラーとして試合に出ていました。2年、3年の先輩にいろいろなことを言われながら、どことやっても負けない、大学生とやっても互角のチームで期待された年代なのですが、結局チームとしては結果を出せませんでした。



小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第126号(2013年01月17日配信号)より抜粋※

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Jリーグの指導者は非常に“サラリーマン化”している リ・ジェファ監督×小澤一郎講演録(3)【 @ichiroozawa】  

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第125号(2013年01月10日配信号)より抜粋※

小澤 これまでのお話に付随して、保護者向けのアドバイスを伺います。保護者の方は、小学校、中学校、サッカー選手だとするとどのクラブに行かせようか、どこが強いのか、どのJクラブの下部組織に行ったら良いのか、情報が錯綜しています。あるいはどのスクールに行った方が良いですか? といったことを聞く保護者も多いと想像します。そういう保護者に対して李さんがアドバイスできることありますか?


李 まず一つは、チームを選ぶ時にいろいろな意味で選びますよね? 友達が行ってた、お兄ちゃんが行ってた、横の子が行った、そういう形で選ぶのであって、子供が選ばないと。たいてい、最初のチームに関しては親が選ぶ。ほとんどの形がそうなんじゃないですかね? そういう感じで良いと思う。その時によく選ぶこと、一回選んだら簡単にやめちゃいけない。


 先ほど言ったことで、自分が最初に選んだチームを大切にしなさいという意味では、最初に選ぶ時が非常に大切。カテゴリーを6年間というのはちょっと長いとしても、私はやっぱり2年か3年くらいでは考えるべき、だから3年で移籍ってのは早い。
 
 1年やって「ここが良くないからあそこへ行く」というのは、イジメだったり何かその子の精神状態にあまりに強いプレッシャーを与える何かがあるなら仕方ない。ですけど、子供がそこそこ楽しくやってそうだったら「あっちの方が良い指導者がいる」とかで移籍させてはダメ。
 
 私は「そこで頑張りなさい、さっき言った友達と頑張る、友達と一緒にやってるんだから頑張りなさい」と。自分が今のチームにいて仲間と楽しくやってるんだったら、ここが良いにに決まってるよね? だから、大抵言うのは親なんでしょ、「あっちの方が良さそうだからあっち行け」って。それは良くないね、という感じですね。
 
 もう一つは、Jクラブに過大な期待をかけないこと。町のクラブから言うと、少なくとも小学校が終わって中学に行く、中学が終わって高校に行くとか、カテゴリーの変化の時には良いです。また新たなステップのためだけど。
 
 でも小学5年生の2学期とか、6年生の1学期とかで行くというのは賛成しない。私からすれば全くのナンセンス。絶対にとは言えないけど、かなりのレベルで良い選手にならない。「自分のために頑張る」ってのは小さいんですよ。それは、頑張りたくなかったら頑張らなくても良いってことでしょ? 
 
 何のために頑張るか、というはあるんですね。このチームを大切にするために頑張ろうとか、最後に出てくるエネルギーというのはそういうところなんです。だから私はチームも大切にしなさい、少なくともカテゴリーはそこで終わりなさいと言いたいです。
 
 私たちは移籍を奨励してません。移籍できない子たちのため、一度チームを選んでしまったんですから、その子たちのために何をやったかって言ったらスクールをやったわけです。そういう子はスクールに来なさいと。取り敢えずテクニックはここで磨こうよと。そういう子のためにスクールを展開しているわけです。


小澤 先ほども選手を見るポイントをおっしゃいましたけど、それ以外のポイントはありますか? 例えば小学校年代の現場で、監督は選手のどういう部分を具体的に見るのでしょうか?


李 小学校で言うと、執着心ですね。ボールに対する執着心だとか、小学生でどういう子がうまくなるかというと「夢中になれる子」です。夢中になる何らかの体感、体験をした子。「夢中になる」という感覚を理解している子。物事に集中して、ボールを追える子。こういう子がうまくなる。


小澤 そういう意味では、小学年代で団子サッカーにならないように指導者があえて指導し過ぎるってのは良くないことでしょうか?


李 全くナンセンスだと思いますね。(フランコ・)バレージってDFですごい選手がいたんですけど、誰よりも早く「あそこが危ない」ってことを理解できないといけないわけですよ。それがカバーリングの原点だから、あそこが危ないってことを理解するということがカバーリング。今風に言えば「チャレンジ&カバー」という言葉を指導の現場では使うんですか? 何でカバーすんの?って当たり前だから、ここが危ないと感じた時でしょって。


 小さい時ですから、「ここはこうなったら危ないんだから、君はここにいなさい」ってなった時にはもう危なくないわけですよ。「危ない」と思うから行くわけだから、それを素早く理解できる人間が一流のDFになれるということです。
 
 団子サッカーをやっていても、早い子はわかるんですよ。このボールがここに行ったら点数が取られちゃう、ということを。その感性を磨かせないといけないわけだから、団子サッカーはOKだと思いますね。それを危なくないものにしちゃう、それはいけないんですよ。危なくない状況を、指導者は作っちゃいけない。特に小学校の指導者たちは。



小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第125号(2013年01月10日配信号)より抜粋※

【 @ichiroozawa】「メッシと同じくらいサッカーを好きになることはできる」 李済華(國學院大學久我山高)×小澤一郎講演録(2)  

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第124号(2013年01月04日配信号)より抜粋※

<(1)より続き>


小澤 やっぱりイメージを持つという意味では、試合を見ないとダメですよね?


李 自分とダブらせたい選手の試合をいっぱい見ることしか、イメージを膨らませることはできないと思いますね。


 もう一つ、いっぱい試合を見るという、回数という時間という意味で言えば、たくさんの試合を見るのが良いのか、自分にピタッと合ったゲームを何度も見るのが良いのか。私は、ピタっときたゲームを何度も見るのが良いように感じます。そういう意味でも、良いゲームをたくさん見るということが良いんじゃないかなと思いますね。


小澤 方法論としては多分自分にピタッと合った、あるいは自分のサッカー観に合ったサッカーを探すためにいろんなサッカーを見て、例えば今の久我山だったらバルセロナの試合を見ようねと。実際、選手は「バルサの試合を見ている」と言ってますもんね。


李 はい。見てない子もいるのかもしれないけど、見てないと私たちが言っていることは通じてないと思いますよ、本当の意味では。


小澤 久我山の選手は勉強もしなければならないし、家に帰って時間的な制約がある中でも見てる子は見てますよね?


李 見てる子は見てると思います。見てる子しかうまくならない。


小澤 実際、「見てる」「見てない」っていうのはわかるものですか?


李 「お前見てる?」って聞くと、「あぁ、はい!」と言い淀む選手はあまり見てないなと思ったりします。ただ、やはり見てると思いますよ。「あの子はイメージしてるね」とか言ってますから。


小澤 ここにいる方々はあまり知らないと思うのですが、久我山で今季ワントップ、ゼロトップ的なポジションでプレーした小田君なんかは最初入った時に、「えっ、なんで監督はこんな選手を使うんだろう?」と正直思ったんです。だけど、この前見た試合ではかなりイメージがあって、今セスクがバルサでやってるようなことをうまく体現でき始めていた印象なんですけどいかがです?


李 小田という選手の評価という意味で言えば、テクニックがあるし局面の理解がある。だから、非常にうまい。ただ、さっきも言ったように、相手をやっつけるだけのフィジカルはないし、比べるものでもないんだけど、イブラヒモビッチでないのは確か。


 イブラヒモビッチは相手をやっつけちゃいますからね。ドカーンとボレー一発でとか、ヘディング一発でとか、胸でトラッピングしてスペース空けたらダーンて打てる。小田にはそういうことはできない。そういう選手じゃないのも確か。
 
 ここに選手がたくさんいますけども、あんまり良い話でないかわからないですけど監督の好みはある。だから、小田が違うチームでレギュラー取れるかといったら、まあ難しいでしょう。


小澤 選手権を狙うチームでは、少なくとも難しいでしょうね。


李 彼にとっての良かったのはウチに来たということ。李と巡り合えったということ。しかし、彼を出して大会で負けたら私の責任。というのが常にセットにあります。だから私はこだわりがあるかどうかわからないけど、うまい選手が好き。


 しかし、『うまい』というのをどうやって定義するかは、そんなに簡単ではないと思ってます。単純には比べられないものですから。昔ですよ、昔だからピンとこないかわからないですけど、フォクツというドイツ人プレーヤーがいたんですよ。ドイツがワールドカップに優勝した時の主力選手。彼をうまいと言うのかはどうかというと、私はうまい選手だと思う。しかし、彼は冗談みたいな話ですが、リフティングが10回できなかったと言いますから(苦笑)。


小澤 10回はできたんじゃないですか(笑)?


李 ただ、そういう選手。しかし、彼は非常にうまかったと思う。そういう意味で言えば、どうやって定義するかは難しいけども、私はうまい選手が好き。


小澤 選手に参考になる話を一つしたいんですけど、2週間くらい前ですかね、(横浜F・)マリノスの中村俊輔選手にインタビューしに行ってきて、「なぜ中村選手はあれだけ広いプレーヴィジョンを持って今やれていると思いますか? 育成年代でどんなことをやってきたんですか?」と聞いたんです。


 彼は「いろんな要素はあるにせよ」と前置きした上で、小学校の頃からお父さんが彼の全試合をビデオで撮ってたと。家に帰ったら強制されるわけじゃなくて、お父さんが家でビデオ再生してたのを横に座って見てたと。そこでお父さんに言われたわけではなく、自分の実際にピッチの上でグラウンドレベルで考えてたことと、上からの俯瞰的な映像で見るプレーとを照らし合わせるような習慣を持っていたということです。
 
 それが中学生、高校生くらいまで続いたので、多分それだと思うということ言ってたので、これは多分ゲームを見るとか、それは別に選手が今から親に試合を撮ってくれというわけじゃないと思うんですけども、そういう部分って例えばJリーグでも良いですしバルセロナでも良いです。そういうプレーを見ることによって自分に照らし合わせることってやっぱり必要になってくると思いますよね?


李 他人から見てわからなくても、自分でわかってるプレーってありますよね? 人が見てなくても「俺はあの時の感覚ってさぁ、すげーんだよ」って。「俺あの時のちょっとしたポジショニング、ちょっと30センチポジションを移動してたの、お前知ってる?」って感じ。選手は、何となくその感覚ピンと来る? それがない奴はダメ。


小澤 なさそうな子が多いですけど、大丈夫ですか(笑)?


李 それがない選手はダメ。だから、俊輔選手が今言ったのが、ビデオを見なさいというのは、一つは漠然と見ながら何となくわかるという部分もあるでしょう。、それともう一つはビデオを見て良いプレーと自分のプレーを結びつける脳の回路を持っているということ。持っていない選手は見ても無駄。


 私は見てないですよ? 自分のビデオ。現役の時になかったし、それほど熱心な親でもなかったので。ただ、私に何があったかというと、当時の選手と自分を比べて「あのプレーは俺と似てる」とか「あのプレーはできる」とか「あれはやってる」とか、そういうイメージが自分の中にあったわけです。
 
 そういうイメージを自分のプレーに対して持てない選手は、はっきり言ってセンスがないねって感じ。だから、難しいよって感じ。ただ、「サッカー好きなんだったら頑張りな」って感じですね。
 
 私の時代は自分のプレーをビデオで見ないですけど、自分のプレーを小学校の時やってたプレー、もっと言えば屋上でいつもストリートサッカーやってましたから。あの時に入れた何十点は今でも覚えてますよ。自分のこういう教室の机で作ったコートで3対3のミニゲームやってた、あの時のプレーで「すっげープレーした」ってのを、今でも鮮明に覚えてます。
 
 45年以上前のことですが、公式なゲームではなくそこの道端でやった、先生に怒られながらやったプレー。そういう所の強いイメージ性を持っていた部分があるのかもしれない。中村俊輔選手はそういうのがすごい強いんでしょうね。


小澤 選手の保護者の方もいらっしゃるので中村選手の保護者がどうだったかという話もちょっと付け加えると、お父さんは中村選手に対して「何であんなミスしたんだ?」といったネガティブな聞き方は一切しなかったと。まあ、中村選手も「そんなことは言わせなかった」とも言ってましたけど。


 ただ、例えばサイドからシュートを打って入った時、実際には狙って打ったのに「たまたま入ったんでしょ?」みたいなことはお父さんから常に聞かれてたと。でも、実際に自分は狙っていたから、映像を見ながら「あのアングルでああいう所見てるでしょ?」というのを、一緒に見ながら説明していたそうです。その辺は、親子でサッカーを楽しむという意味では、一つのヒントになるのかなと思いましたけど。


小澤 香川真司の話に戻ります。マンチェスター・ユナイテッドで推定年俸600万ユーロ、つまり6億円くらい貰っていると聞きます。CMや広告のスポンサー収入もあるでしょうし、それ以上の結構な額になるでしょう。Jリーガーの中になかなか1億円プレーヤーがいない時代ですが、やっぱりサッカーっていうのはそうやって世界にマーケットがあるし、世界でできるスポーツなので、一流選手になるとやっぱりそれくらい貰える。


 もちろん、日本のプロ野球、あるいは大リーグを目指すっていう選択も良いかもしれないですけど、サッカーというのはやっぱりグローバルなスポーツで、世界中のファンを魅了するようなものです。世界のトップレベルのクラブでやると、それだけの収入が得られるというのは魅力として一つありますよね?


李 私はよく冗談で「日本で一番うまかったんだ」と言います。「え!?」って言われますけど(笑)。「今、何やっているの?」と。今の子は、日本で一番うまければビッグイヤー(UEFAチャンピオンズリーグ優勝)をつかめるチャンスが来たんだよって。それだけ変わったんです。



小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第124号(2013年01月04日配信号)より抜粋※

【 @ichiroozawa】「まともにボールを蹴れない選手ばかり」の中、際立つ桐光学園のフィジカルベース  

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第124号(2013年01月04日配信号)より抜粋※

(c)Ichiro Ozawa



 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
 
 日本でサッカージャーナリストの仕事をしていると、年末年始の「お正月気分」に浸れるはずもなく、30日に開幕した第91回全国高校サッカー選手権大会の取材に追われている。加えて、今年(年末年始)は弊社アレナトーレが『サッカークリニック』の連載や指導書でお馴染みのアスレチック・ビルバオの育成コーチ、ランデル・エルナンデス氏を招いて指導者講習会やクリニックを主催しているため、その手伝いとしての通訳業務も数回担当中。
 
 今回の選手権については、開幕前から神奈川県代表の桐光学園推しで、取材会場もニッパツ三ツ沢球技場に絞っていた。理由は2つ、ざっくりピッチ内外で1つずつかあるのだが、間違っても「優勝候補だから」、「プリンス関東1部を制して、来季プレミア昇格を決めているから」といったチームとしての評判や目先の結果によるものではない。
 
 今季はプリンスリーグ関東1部の2試合とプレミア参入戦の初戦であるジュビロ磐田U-18戦を取材したが、佐熊裕和監督のチーム・組織作り、サッカー観に共感し、「結果を出してその考えが取り上げられることが日本サッカー界のプラスになる」と確信しているからだ。
 
 まずピッチ内では、「サッカーの目的はゴールである」という本質、原理原則に則った戦術でありチームコンセプトであることが理由。選手権での桐光学園のサッカーを見てもらえればわかる通り、多少雑でミスもあるが、基本的にはチーム全体、11人の選手全員がゴールに向かって前向きにプレーしている。
 
 近年は高校サッカーの舞台においても、FCバルセロナやスペイン代表のサッカーとその成功事例の影響を受けて、ポゼッション型のパスサッカーがブームとなっている。中にはそれ自体が目的化してしまっているようなチームも見受けられるが、桐光学園にはその気配は全くない。
 
 プロ入りする選手はいないものの、高体連のチームとしては非常に個の能力とその集合体としての総合力が高く、佐熊監督のさじ加減一つで華やかなパスサッカーもできるとは思うが、今年の桐光については、「ポゼッションはあくまでゴールを奪うため、ゴール前にボールを運ぶためのツールに過ぎない」というこれまた当たり前の原理原則が周知徹底されている。
 
 また、これはピッチ内外で関係することだが、下の監督コメントで私が質問しているように、高校年代でのフィジカルベース作りの重要性を認識して、プロのトレーナーを雇い、フィジカルトレーニングを施している。足下のテクニックやパスワークに溺れるようなチームも散見される中、佐熊監督からは「技術、戦術のベースと同じく、フィジカルベースがなければ次のステージ(大学、プロ)で通用しない」という考え方を覗き見ることができる。
 
 31日は1回戦の高知と仙台育成の試合を取材すべく埼玉スタジアム2002に足を運んだのだが、「パスサッカー」を謳い大会前の評判としては悪くなかった高知は、全国という舞台で戦うためのチームとしては非常に“軟弱”に映る軽量級のチームだった。
 
 一昔前のような非科学的なフィジカルトレーニングはもはや無用の長物だとは思うが、スピード、アジリティ、運動量を高めるためのフィジカルや体幹のトレーニングは特に日本のような世界と比較した時に「軽量」になってしまう選手には必要不可欠な要素で、私個人としては「高校年代から導入すべき」だと考えている。
 
 もちろん、方法論としてそれがボールを使ったフィジカルでもいいわけで、指導者はもう少しカテゴリーや国境を超えた視点で選手育成をすべきだろう。選手権で小柄のみならず、線の細い選手ばかりが並ぶ姿を見ていると、そもそも日本の育成年代における指導で「食べること」の重要性がしっかりと躾けられているのかどうか怪しく感じる。
 
 31日は、現在来日中のアスレチック・ビルバオの育成コーチであるランデル・エルナンデス氏と一緒に高知対仙台育成戦を観戦したのだが、試合が始まった直後の彼の第一声は「まともにボールを蹴れない選手ばかりだね」だった。

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第124号(2013年01月04日配信号)より抜粋※

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