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「個という基礎があって、初めて組織が成立するんです」鈴木隆二(フットサル元日本代表)インタビュー [ @ichiroozawa] 

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第128号(2013年02月07日配信号)より抜粋※




写真提供:鈴木隆二



 昨年10月のスペイン取材時、当メルマガの隔週コラムでお馴染み坪井健太郎氏のコルネージャ・ユースCの試合観戦に出向いたのだが、その際会場で知り合ったのがフットサル元日本代表の鈴木隆二氏だ。2009年からスペインのバルセロナに移り住み、「サッカー大国」「育成大国」であると同時に「フットサル大国」として世界を牽引するスペインフットサル界で選手・指導者として活躍している。


 1月7日発売の『サッカークリニック2月号』に「元フットサル日本代表が語るフットサルとサッカーの関係」という鈴木氏のインタビューが掲載されているのだが、掲載号が出たということでかなり遅れたタイミングではあるが日本の団体ボール競技発展のために尽力する鈴木氏のインタビューをここでも掲載する。


 コルネージャのスタジアムで知り合ってすぐ「この人は面白い」というインスピレーションを受け、即座に取材を申込み、試合のハーフタイムにインタビュー収録するという異例の取材だったのだが、鈴木氏からは非常に整理された上でロジカルな話が出てきた。
 
 ここでのインタビュー内容はあくまで『サッカークリニック』に掲載し切れなかった内容のこぼれ話ではあり、できればクリニックのインタビューを手にとって読んでもらいたいと思うが、スペインのフットサル事情を含めてなかなか日本には入ってこない情報や話が満載の内容になっていると自負している。


 おそらく、今後継続的にお付き合いさせて頂くことになるであろう、鈴木隆二氏の人となりをまずは知ってもらいたい。


【プロフィール】鈴木隆二(すずき・りゅうじ)
 1979年5月7日生まれ、東京都出身。読売SC、日産FCジュニアユースを経て、ブラジルにサッカー留学。ブラジルでは、ボタフォゴFCでプレー。帰国後、駒澤大学に入学し、サッカー部に所属。大学卒業後にフットサル選手に転向し、カスカヴェウ東京、ファイルフォックス、Casa de Espanha(ブラジル)、府中アスレティック、ASDローマ(イタリア)、名古屋オーシャンズでプレー。2009年にスペインに渡り、RAM LEON、FUCONSA JAEN FS、SALA 5 MARTORELL(ES)を経て、現在はSANT ANDREU DE LA BARCAに所属。



――これまでの経歴を簡単に教えて下さい。

鈴木隆二(以下、鈴木) 小学生の時に読売サッカークラブ、今の東京ヴェルディのジュニアでプレーをしていました。中学では(横浜F・)マリノスのジュニアユースに所属、高校生の時にはブラジルのボタフォゴFCに3年半サッカー留学をしました。その時のチームメイトには元レアル・マドリードのシシーニョ(現スポルチ・レシフェ/ブラジル)や、今FC東京でプレーしているルーカスがいて、2、3年一緒にプレーをしていました。日本に帰国後は駒澤大学のサッカー部で4年間サッカーをして、大学卒業と同時にフットサルに転向しました。

――フットサルに転向後の経歴は?

鈴木 今のFリーグ、ペスカドーラ町田の前身であった、CASCAVEL TOKYO(カスカヴェウ・トウキョウ)というチームで、フットサルのキャリアをスタートすることができました。当時の日本代表の中心選手が何人もいた日本でもトップクラスのチームだったので、自分の中でそこで半年間フットサルを真剣にやって、ある程度結果が出なければ辞めるつもりで取り組んでいました。
 半年くらい経ち、日本代表の若手を中心としたチーム、ある意味でB代表ですが、その代表に呼んでもらうことができました。そこから日本代表になるチャンスを得ることができ、多くのチームでプレーをさせていただき、今日に至っています。

――サッカーからフットサルへの転向は大きな決断だったと思いますが、決め手は何ですか?

鈴木 私はブラジルでやっていたサッカーの感覚、つまり選手全員がボールに絡み、チーム全体でラインを押し上げてゴールまで行くサッカー、またブラジル特有の突出した能力の選手たちが作り出す連係プレー、個人技、そういったものにとても魅力を感じていました。

 フットサルという競技を始めた時に、当然ピッチも狭い、プレイヤーの数が少ないということで連携や融合や組織戦術、それらの総合的な融合がものすごく楽しくて、そして何と言っても攻守において常にゲームに参加している感覚が楽しくて、それでフットサルにのめり込んでいきました。

――ブラジルのサッカーの選手で幼少期にフットサルをしていたという話をよく聞きますが、実際はどうなのでしょう?

鈴木 私の所属していたボタフォゴFCでも、フットサルコートでのトレーニングというのは月に1回ほどありました。今思い返すと、フットサルの戦術的なトレーニングをしていたわけではないのですが、狭いスペース、少人数の中でいかに味方と連携をとりながら相手を崩し、ゴールを決めるかという狙いがある練習でした。

 また、オフに友達の家に遊びに行くと、必ず近所の友達と一緒になって路上でストリートサッカーを裸足でやっていました。ストリートでのサッカーに始まり、少人数で狭いピッチで「遊ぶ」ことは、選手に関わらず、多くのブラジル人が幼少期に日常的にやっていると思います。

――ブラジルの場合、融合というよりは個を積み上げた集合体で戦うというイメージですが?

鈴木 そうですね。やはり、各ポジションに能力の突出した選手がいて、彼らがピッチ内で創造力をベースに連携、バランスを取って組み立てていくという感じです。留学当時のチームメイトの中に、「こういう選手が天才なんだ」と思わされた選手がいて、彼に練習中「スズキ、オレと連携しろ!」と言われたのを今でもはっきり覚えています。

 それはシステムや戦術ではなく、ただ単に「オレと組め! プレーを作り出すから」という意味でした。ブラジルの教育の中でも、例えば図工の授業があったら、日本の場合は材料のみならず「何を作るか」という目的までも決まっていますが、ブラジルの場合は「何を作るのかはあなたが決めなさい」という教育方針だというのを聞いたことがあります。
 
 サッカー、フットサルもそれと同じで、その場にあるもので何をどのように作っていくかは選手次第というところがあります。当然スペインでも「自分次第」「個」という感覚はあるのですが、大きな枠組みの「組織」というものに対してのこだわりも非常に強く、その2つを融合する能力がとても優れているのではないかと思います。

――日本のフットサル選手は、まだサッカーをやっていて転向した選手が多いのですか? それとも、育成年代からずっとフットサルをやってきた選手の比率が増えてきているのでしょうか?

鈴木 今20代前半の選手たちは、10代の頃からフットサルという競技に触れて、今日まで至っていると思います。ただ、私の世代になると完全に子供の頃はサッカーをやっていて、高校や大学サッカーを終えた後、フットサルに転向という選手がほとんどです。

 日本のフットサルは今、Fリーグが発足して6年目になりますし、各チームがサテライトや育成に力を入れ始めています。そういうことが浸透して日本でも若い世代からフットサルという競技に触れる機会も多くなっていると思います。

――日本の現状としてはまだ、「個が弱いから組織」という考え方や言葉が強調され過ぎている気がするのですが?

鈴木 それはあると思います。2人組、3人組、また組織というのは、1である個を確立していかないと成立しません。スペインという国に来て学んだことなのですが、1というのは自分の個性からなるスタイルであり、そのスタイルに関しては敵味方が誰であろうが、試合の展開がどうであろうが、監督がどうであろうが崩れない。1の個としての基礎、それがあってはじめて監督やチームメイト、戦術との組み合わせからなる創造的な新しいプレーの可能性や形、臨機応変に対応する能力がついてくるのだと思います。

――指導者の方法論やアプローチ、練習メニューの構築において、日本とスペインで違いはありますか?

鈴木 こちらの監督は一人一人のカラーがはっきりしています。全ての指導者に共通しているかはわかりませんが、その競技における原則をしっかり押さえた上で自分の個性を出していると思います。ただ単に自分の方法論を選手に押し付けるのではなく、自分が抱えている選手が他のチームに行っても必ず財産やプラスになることができる競技原則を指導していると感じます。

 育成年代から競技の原則を身に付け、多くの監督や仲間との経験が、各選手の個性や総合的な能力を上げるのに大きく貢献していると思います。練習メニューとしては、プレシーズン中とシーズン中では当然異なった目的の基練習メニューが構築されますが、指導者が次の対戦相手を分析し、チームとして改善、または取り組みたい事象を誘発させる複合的メニューを細部にこだわって構築しています。

――スペインでフットサルの指導者ライセンスを取得中とのことですが、実際にスペインで勉強してみて、ライセンスのシステムや授業内容についてどういう感想を持っていますか?

鈴木 各講師は、それぞれの科目に対して原則をしっかり押さえながらも独自の考えで講義を進めます。参考書はありますが、講師自身の経験や研究したテーマ、自身の考えで内容が構成されているため、講師がスポーツ現場で活躍している場合や該当種目の経験が豊富であればあるほど講義内容は面白くなります。

 各科目の原則とそれぞれの講師の経験から構成されるオリジナルな講義内容はとても興味深いものがあります。また、スペインではオフシーズンになると、有名なスペイン人監督による「指導者による、指導者のためのクリニック」が全国各地で開催されます。
 
 私は毎年オフシーズンになるとそれらのクリニックに必ず参加するのですが、ここでは講師を務める各監督が、それぞれの得意分野やフットサルにおける重要なテーマに関する持論を披露してくれます。これらの講義を受けて強く感じることは、「彼らは現役の監督でありながら、なおかつフットサルというスポーツを通した研究者である」ということです。


小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第128号(2013年02月07日配信号)より抜粋※

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