オーストラリア戦、日本代表の戦術的欠点
これはバレンシアCFのDFトレーニングの1シーン。
いつこの映像を紹介しようか悩んでいたが、昨日のドイツW杯、
オーストラリア vs 日本
の試合において指摘したい内容を的確に実戦してくれているので是非、参考映像に使いたい。
さて、みなさんはこの映像をご覧になって、どのようなことをお感じになるだろうか?
昨日の日本代表のDFラインと比較してもらいたい。後ほど、私から日本代表DF、チームとしての戦術的欠点を指摘してみたいと思う。
まずはみなさんに宿題ということで提示しておく。
では、少し早いが私なりの見解を述べたい。
まず、大前提として私が言いたいのは、この試合は「采配の差」で負けたのではないということ。多くのメディアでは、既に「ヒディングとジーコの采配の差」を挙げているようだが、それも当然ながらある。事実。
ただ、私はそれ以前の問題、チーム作り・戦術的な要素で日本は負けるべくして負けたのではないか、と思っている。少なくとも対オーストラリアを想定したゲームプランとしては完全に計画性の無さが見受けられた。
戦術的な分析の前に、私なりの意見はこうある。
・フィジカルに優るオーストラリア相手に間延びしたサッカーをして蹴り合うサッカーをしても勝てない
・日本はイタリアと違ってカテナチオの国ではないし、屈強なDFもいないのでペナルティエリア付近でいくら守りを固めても守りきれない
・高さで劣るチームがCKをまともに蹴っていても得点のチャンスは生まれない(トリックプレーやショートCK無し=無策)
では、特にDFに関する戦術的分析に移る。
■戦術的欠点その1
「プレッシングのスタート位置が決まっていない」
日本は、前半の10分くらいまで少し“コンパクトなサッカー”がみられたがあとはずるずる引いて守る間延びしたサッカーをした。
3バックで宮本が余るDFラインを敷いている以上、ラインを揃えてアップ・ダウンをコントロールするような守備体型は本来求められていなかったのだろうが、それ以上にまずかったのが、どの位置からプレッシングをかけるのかチームとしての共通理解がなかったこと。
1人1人がバラバラにプレスにいき、チームとして組織的な守備が出来ていなかった。勿論、間延びした状態で1人1人が孤立しているという状況によって引き起こされる必然的な事象でもあるが、前半当初からその“曖昧さ”が目立っていた。
常に高い位置から1試合を通してプレッシングをかけるのは無理だ。ましてやこの日の“暑さ”という外的要因から考えればどんなにコンディションが良い選手、チームでも90分は続かない。ただ、試合の状況、時間帯によってどの位置から仕掛けるのか、網をかけるのかはチームとして共有すべきであろう。それがなかった。
■戦術的欠点その2
「ロングボールサッカーへの対処の仕方」
オーストラリアは終始ロングボールを使いながら攻めてきた。前線のビドゥカをターゲットにそのこぼれ球やポストプレーからの展開を狙い中盤から前線へ駆け上がってくる。中盤を作ろうという気はなかった。DFから中盤からスペースと時間があればロングボールを放り込む。
そういう相手に対処する上で考え方としては2つある。
1、ロングボールを頑なに跳ね返す
2、ロングボールを蹴らせない
日本は1を選択した。とにかくロングボールを放り込まれるのはわかっていてずるずるラインを下げ、引いて守る。中澤、坪井の比較的身体能力の高い選手が競り合い、こぼれ球を福西をはじめ周りの選手が拾うという戦法。
ただ、サッカーにおいてより効率的な戦法が2。とにかく、蹴らせないこと。放り込むパサーに対してプレスをかけ少なくとも良いボールを放り込ませないこと。
また、プレスをかけることにより、DFラインはオフサイドトラップを必然的に仕掛けることも可能。
前半3分に宮本がオフサイドトラップを仕掛けてビドゥカがオフサイドになったが、私はあのシーンをオフサイドトラップとは呼ばない。チームがコンパクトにプレスをかけていて“必然的”にオフサイドになったと捉える。
前半の早い段階から、プレスの位置が定まっていなく、ラインもずるずる下がりロングボールを跳ね返すことに終始する日本代表をみて、正直、「どこまでもつか…」と思ったのが本音。
■戦術的欠点その3
「DFラインの押し上げ」
さて、ここからが映像と関連する。
バレンシアCFのDFライン、左からモレッティ、アジャラ、アルビオル、ミゲルの4人の連携をみてもらいたい。
横から撮影しているのでDFラインがどのようにアップ・ダウンしているかおわかり頂けると思う。
敵の選手がバックパスをすればそのボールの動きに合わせてラインがアップするのがわかると思う。そして、必然的にFWはオフサイドゾーンに取り残される。
勿論、ドリブル等でラインを割って切り込まれればその分、DFラインをダウンする。そのコントロールの様子は映像をみてもらえば理解してもらえるだろう。
特に、アルゼンチン代表のアジャラのコーチング、そして第2シーンでモレッティが「ラインを合わせろ」と言って他の選手に数メートルポジションをアップさせているのがよくわかるだろう。
現代サッカーでは基本的な守備組織、守り方である。日本の高校生、いや中学生でもやっていること。
ただ、この日の日本代表はそれをしなかった。出来なかったとは思えない。敢えてしなかったのかもしれないが、それは現場の人間のみぞ知ること。
例えば、こんなシーンが多かった。

オーストラリア代表のFWがポストになって味方選手にボールを落とすシーン。
ボールの位置を第一優先とするゾーンDFの概念を持てばそのボールの動き、位置に沿ってDFラインを上げるべきである。しかしながら、日本代表DFはマンツーマンの概念でラインを上げようとはしなかった。
そのような守備が良いか、悪いかは結果が示してくれていると思う。日本は敗れた。私は日本代表の体力的な消耗についてこう考えている。
“暑さ”以上にやっている“サッカー”により消耗した
暑さにより体力的にきつかったのは当然だろうが、それ以上にこういうサッカー、守り方をして消耗していたと言えるだろう。
オーストラリア2点目のシーンについても通常であれば当然守れたシーンである。体力的な良い訳ではない。戦術的な欠点が生み出した失点であった。

このシーン、日本の中央やや左寄りでアロイージがポストプレーをし、カーヒルに落とし、そのまま狙いすましてゴールとなるのだが、宮本の対応、そして中澤のポジションに注目してもらいたい。
この時間、確かに体力的な消耗により日本の選手の足が止まっていたのは事実であるが、チームとしてDFラインのコントロールの意識があればこの得点シーンについても宮本がもっと寄せを早くできただろう。少なくとも、シュートブロック、体に当てることは出来た。
ただ、中澤がペナルティエリア内深くまで引いてしまい、オーストラリアの選手が中澤の前に2人も余っていた。宮本はその2人へのパスにも警戒心を持っていた為、寄せるかウェイトするかで一瞬迷った。その時間が決定的な“ロス”となり失点につながった。
もし、中澤が宮本とラインを合わせるような意識があれば、ペナルティエリア内に入っているFWは無視して自身のポジションを上げるべきだったろう。そのFWにパスを出せばオフサイドになるし、シュートを打たれてこぼれ球を詰められたとしてもオフサイドになる。
ボールの動きに合わせてDFラインをコントロール出来ていれば防げた可能性の高い失点であった。
彼らともにそういった戦術眼は絶対に持っている。所属クラブではそういうサッカーをしているはずだ。
しかしながら、このW杯という舞台、日本代表というチームではそういった守備、組織が構築されていなかった。
日本が世界を舞台に戦う上でそういった組織的な守備、チームとしてのオーガナイズこそが生命線になるのであるが、どうも今回のチームはそのベースがないようである。
W杯直前の調整をみていないだけにぶっつけ本番で日本代表の姿をみて正直、ショックだった…
日本の生命線である、組織的な守備やコンパクトなサッカー、そしてクリエイティブな選手を活かすための中盤の組み立てを捨てて、どうオーストラリアに勝とうとしたのか。どうW杯を戦おうとしているのか。
私には、オーストラリアに負けるためにこのサッカーを選んだとしか理解できなった。いや、理解したくなかった。
残念ながらグループリーグ突破の可能性が低くなった以上、日本“らしさ”を出して世界に日本のサッカーを印象付けてもらいたい。
先程、スペインのTVコメンテーターがこう話していた。
「日本は近年急激に成長を遂げた国だと思ったけど、今日の試合は全く勝てる気がしなかった。今日の内容で勝とうなんて無理だ。インパクトの無いサッカーをしていたね…」

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- [2006/06/13 06:58]
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Comments
うーん。
昨日の試合を見て、いろいろと自分なりに考えたのですが、
イチローさんの見ているポイントに驚きました。
はぁー。勉強になりますm(__)m
ちなみに自分も「采配の差」を原因に挙げた一人です。
後半はかなり間延びしまくってましたね。ロングボールを
蹴り込まれ、競り合い、こぼれ球をひろわれ、体力消耗・・・。見ててつらかったです。中澤などはよくやってたと思います。
テレビ等では決定力不足などをあげられますが、守備戦術で相手に屈しました。
とにかく、蹴り込み、ごり押しの攻撃は高校でいうなら、国見みたいですね。フィジカルで押しまくる・・
はじめまして
はじめまして。以前からこちらのブログは知っていましたが、書き込みは初めてです。
非常に興味深く読ませていただきました。オーストラリア戦を見て思ったことは、ジーコが持ち込んだ「自由な発想」という言葉は、築き上げた「組織的な守備」を破壊してしまったことだった様な気がしています。非常に残念です。
中盤の出来が生命線、とすれば
特に現代サッカーに於いて、
本当の意味でのゲームメーカーは宮本かもしれませんね。
それは3バックにしろ4バックにしろ、
サッカーの生命線が中盤だとしたら、
生かすも殺すも、DFライン次第という意味で。
またロングボールへの対処で、小澤さんの言う1.を
選択するのも、それはそれでアリだと思います。
しかしフルバックのメンツを見て、
空中戦で互角に戦えるのは中澤ひとりしかいません。
世界相手にその戦法を取るなら、
大袈裟に言えば、身長の高い順に3人召集する方が
まだ戦えますよ。。。
ぼやけていました
親善試合からずーっと、日本代表の戦い方は曖昧でぼやけていたんですよね。
本戦が始まってから何かはじけるものがあれば・・・と思っていましたが、結局いつもと同じ状態でした。
「だってジーコは何もしないんだもん」
といっていた方がいましたが、そのおかげで与えられるだけだった選手たちが自分で考えるようになった、ともいっていました。
これはこの先の代表のことも考えると、絶対に必要なことでしょうし、今回はこの選手たちの考えが、世界のレベルに届かなかったのでしょうが、今回もし敗退しても、何かはつかめるのかもしれません。
采配の差というのもあえてジーコを責めるのであれば、「何もしないんだもん」という部分かもしれませんね・・・。
とはいえ、PSVや韓国と比べると、ヒディングの采配がバッチリはまったとも言えないようにも思えます。こんなもんじゃないだろう・・・と。
・・・貴重な映像をありがとうございました。
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ジーコの夢
バレンシアサッカーライフとプラスチックレンズに夢を託して にトラバしています。 ...
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